不動産業を長年やっていますと、「生活保護の申請をして賃貸物件を探している」というお客様と接することもあります。一言で生活保護といいましても色々なお客様がいらっしゃいます。- 急な離婚で生活が圧迫してしまった人
- 病気で働けない人
- 明らかに元気そうなのに生活保護の申請を受けて部屋を探しに来る人
テレビでよく問題になっているのが3番目の方達ですが、人数的には少ないですし問題を起こす可能性が高いので相手にしません。
明らかに元気そうでも医者の診断書に「働けない」とあると申請の受け付けはしないとならないので市役所の職員さんも大変ですね。
今回は、そういう元気満点の受給者ではなく、本当に生活保護を必要としている方が部屋探しを行う際の注意点について解説していきますが、まず基本的に生活保護で賃貸を探している方の審査は厳しいです。
だからこそ、部屋を借りるために「なぜ生活保護だと部屋が借りられないのか?」を、事前に知っておくことが重要になってきます。
大家さんも、生活保護の方との契約を敬遠するだけでなく、しっかり理解して契約すれば安心できますので最後までお付き合いください。
栃木市の生活保護(住宅扶助)の状況
まずは栃木市の生活保護受給の状況をご説明します。
栃木市全体で1165世帯、1457人 が生活保護を受給しているそうです。(平成29年度)
割合でいきますと0.93%くらいですが、栃木県全体ですと1.05%になるので、少しすくないくらいでしょうか。
ただ、宇都宮が圧倒的に多いので(1.63%)栃木市は平均的と考えて良さそうです。
ちなみに一番少ないのは那須烏山市で0.64%です。
田舎の方が申請しにくい雰囲気なことと、何かあった時には周りで助け合いが出来ていることが考えられますね。
どういった方が生活保護を受けてらっしゃるか、その割合ですが、
・ 高齢者世帯(65歳以上)55.0% ・ 母子家庭世帯 2.7% ・ 障害者世帯 9.6%
・ 傷病世帯 12.4% ・ その他 20.2%
やはり、年金だけでは暮らしていけず高齢になって生活保護を受ける方が多いようです。年金を受けていても、国の定める最低生活費に足りない分を保護費として支給されるというパターンですね。例えば年金だけだと生活費でいっぱいいっぱいだから住居扶助(家賃分)だけ受けるといった感じです。
生活保護の方には必ず市役所の職員さん(ケースワーカー)が付くのですが、一人で90人~100人を担当しているそうです。テレビドラマにもなっていましたが大変なお仕事です。
不動産を持っていると生活保護を受けられない?
不動産を持っていると、生活保護を受けられないからと我慢して苦しい生活をなさっている方も多いと聞きます。例えば、田舎の方で誰も買い手が付かないような場所だと売りにも出せないような状況です。そんな場所ですと、今の家に住みながら、生活保護が通る場合もあるのです。
まず、住宅ローンが無いことが絶対条件です。住宅ローンがある状態ですと、生活保護費で住宅ローンを返済することが出来てしまうのでNGになっています。(生活保護費で資産形成をするのは禁止です)
住宅ローンがキツイので生活保護を受けるという場合には、自己破産をしてからの申請になります。
次に、居住不動産の評価額が500万円以下である事です。評価額が高いと売却してから相談してくださいとなってしまします。評価額が低いという事は、固定資産税も安いので生活保護で家賃を出すよりも得なのでこのような制度になっているようです。
私も、たまに司法書士の先生に不動産評価の査定をお願いされてお手伝いしています
評価が高い場合には、テレビCMでもやっている「リバースモーゲージ」を勧められることもあるそうです。不動産を担保にお金を借りて、所有者が亡くなった時にその不動産を売って返済するというやり方です。
栃木県では今まで0件。都会のマンションなどを想定したシステムですよね。
栃木市ではいくら住宅扶助(家賃)が出してもらえるか
一番気になる生活保護の金額ですが、生活扶助、住宅扶助、教育扶助などと細かく別れています。
今回は賃貸住宅に関係する住宅扶助のみの説明とします。(生活扶助は複雑なので市役所のケースワーカーさんに聞いた方がいいと思います。)
まず、生活保護の金額ですがその地域地域でまったく金額が違います。その基準になるのが地域の等級制度です。1級地の1から3級地の3まで全部で9段階になっています。同じ栃木県でも宇都宮は2等級地の1、栃木市は3級地の1とかなり差があります。都会程お金がかかるということですね。
3級地の1である栃木市では家賃上限は下記のようになります。
一人世帯 32,200円
二人世帯 39,000円
栃木市なら築年数が古ければ2DKでも35,000円くらいでありますので十分に物件を選べます・・審査が通れば。。ですけど
なぜ、生活保護だと賃貸契約断られるの?
実際に生活保護で賃貸の部屋探しを行った方は「なかなか貸してくれる部屋が見つからない」ということで苦労したのではないでしょうか。
生活保護というだけで大家さんがNGという物件もありますし、また大家さんまで話が通らずに仲介会社の営業の判断ではじかれる事もあります。
まずは「裏事情」をお話していきましょう。
大家さんがNGをだす理由
まず大家さんが生活保護の方をNGにするのは「働けない理由がある」からです。
ここポイントなのですが「働けないから家賃の支払いが安定しないのでは?」ということではありません。(少しは心配材料の1つになりますが)
むしろ家賃については役所が払ってくれるので安泰なんです。
では、大家さんがNGを出す理由は何なのか?
これはある大家さんに聞いた話です。
うつ病で生活保護を受けている方を入居させましたが、すぐに他の入居者とトラブルを起こし(盗聴器があるとか、視線が合ったら覗かれたとか)他の入居者が半分以上退去されてしまったということがあったそうです。その方に退去してもらってからまた満室になるまで1年以上かかって、大家さんもずいぶん苦労したそうです。
「生活保護を受け入れない大家さんは冷たい」と思うかもしれませんが、大家さんも借金してアパート経営していますのでリスクがあるのでしょうがないのです。
不動産屋さんが生活保護を嫌がる理由
担当の営業マンによっては、審査しないどころか案内もしてくれない、話も聞いてくれないところもあります。
営業マンにはノルマがありますので、時間のかかる契約をやりたがらないという場合があります。生活保護の方との契約ですと、役所とのやり取りが合ったり、契約日によっては入居費用の振り込みが翌月にずれたりすることもあります。さらに、精神疾患で生活保護を受けていらっしゃる方の場合、入居後のトラブルで時間を取られることも考えて断ってしまうこともあるようです。
生活保護の方が部屋を借りるための工夫
結論から言えば生活保護というだけで賃貸で部屋を借りるハードルはグッと高くなります。
では借りるためには一体どうすれば良いのでしょうか?
それは、
大家さんを説得できるようなプラスのイメージを与えらえるようにすることです。
例えば、「生活保護を受けていても、これは一時的なもので、すぐに働き始めます。」「収入のある連帯保証人がいます」といった話が出来れば大家さんも相談に乗りやすいでしょう?
次に、身だしなみを整えてもらう事です。別に綺麗に着飾ってくださいということではなく、普通な恰好をしてきてくださいということです。
私たち、不動産業者は来店時の身なりを か・な・り チェックします。ぶっちゃけた話、「ためらい傷がある」「タトゥーがある」と判断した時点で紹介できる部屋はありませんとお断りする可能性が大です。
「不動産屋さんは冷たい人が多いな」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、入居者さんに同情して大家さんにうまく誤魔化して入居してもらい、何かしらの問題が発生すれば、大家さんにも他の入居者さんにも迷惑をかけてしまう事になるので、ご理解いただければと思います。